第5回目は、鹿児島大学病院 医療安全管理部 副看護部長 東(ひがし)様と、看護師長の伊地知(いじち)様を取材しました。
インシデントレポートの聞き取りや重複事例の報告、医師への働きかけなど、普段行われている医療安全の活動について伺いました。

病院様の医療安全の体制を教えてください。

GRMは私たちを含めて専従が4名、兼任は2名います。
リスクマネージャーは各診療科や病棟、部門ごとに1名ずつ任命されていて、報告されたインシデントレポートを評価する分析委員も複数名います。

病院全体での会議や取り組みを教えてください。

月に1回リスクマネージャー会議を開き、医療安全や感染に関する情報を共有しています。


また、医療安全に関する困りごとや相談も受け付けています。他には、「患者誤認・部位誤認防止強化月間」や「0-1レベルインシデント報告強化月間」を設定し、周知・聞き取りを行って効果を確認しています。

医療安全管理部での取り組みを教えてください。

毎週水曜日に、前週に報告されたインシデントレポートの中から特に重要なものを選定し、現場スタッフに詳細な聞き取りを行っています。
聞き取った内容を整理して、木曜日に開催されるインシデント分析部会で報告をしています。

聞き取りの有無に関わらず全てのレポートを確認し、聞き取りを行っていないものでGRMの先生が気になるレポートについては、後日聞き取りを行い、次回の会議で報告をしています。

聞き取りは何件ほど行っていますか?

先週は30件ほどでしたが、週によってかなりばらつきがあります。


先々週はインシデント件数が100件を超えていました。
全てのレポートの聞き取りを行うことは難しいので、特に重要なものに絞って聞き取りを行っています。

聞き取りを行う事例の判断基準を教えてください。

分析委員がレポートの重要度を判定してくれるので、それを参考にして、特に重要なレポートの聞き取りを行っています。


また、「患者誤認・部位誤認の発生=重要事例」として扱っているので、これらのレポートは必ず聞き取りを行っています。

最近は情報漏洩についても、問題意識を高めるようにしています。例えば、診療情報提供書を誤って違う病院に送付してしまったなどが該当します。
社会的に意識が高まっている部分ですので、院内でも敏感になっています。

報告件数は年間何件ですか?

2024年度はインシデント(1)が約3500件、インシデント(2)が約130件で、どちらも昨年度より増えていましたね。
年間3000件以上の報告を目標にしているので、それは達成できました。

報告件数が増えた理由を教えてください。

重複事例の報告が増えたことが理由だと考えています。
複数の職種が関与している事例が発生した際に、今までは片方の職種からのみ報告が上がるケースが多かったです。しかし、同じ事例でも職種によって振り返るポイントが異なるので、現在は関与した職種それぞれが報告をするように働きかけを行っています。


 また、出血量や手術時間が予定を超過した場合も報告をしてもらうようになったことも理由の1つだと思いますね。
手術室のデータをGRMの先生が集約し、手術予定時間と実際の時間、出血量を把握できるようにしています。未報告の事例を診療科と共有しながら、報告を上げてもらうように促しています。

今後の目標を教えてください。

医師や歯科医師からのインシデントレポートの報告件数増加を目指しています。
現在の報告割合は約15%で他の大学病院様と比較すると高い方ですが、以前は20%を超えていたため、その水準を目指しています。