コロナ禍でより医療安全への意識が高まる今、医療安全管理者の業務範囲や責任は増える一方です。
これまで情報収集の場となっていた学会や地域の連携会議も、開催中止・オンライン対応を迫られています。
そんな状況下で医療安全管理者に向けて何かお役に立てないかということで、各病院様の医療安全の取り組みを取材し情報発信する取り組みを始めました。

第2回目は、医療法人相生会 金隈病院 春木(はるき)様を取材しました。
春木様は、専従の医療安全管理者として活動されていらっしゃいます。
「高齢者の入院が多い」という病院の特性をふまえて、取り組んでいる医療安全の活動について伺いました。

院内の医療安全体制について、教えてください。

今年の6月から、専従の管理者になりました。
それまでは、病棟師長と医療安全管理者を兼任していました。

病棟業務と医療安全業務のバランスのとり方は、すごく悩みました。
なかなかすべての報告書にじっくり目を通すというのは難しく、斜め読みになりがちな部分はありました。ラウンドも、委員会で行っていた月に2-3回が限度でした。

専従になってからは、インシデントレポートだけでなくヒヤリハットも全て欠かさず目を通せるようになりました。ラウンドも、週3回ぐらいできています。ヒヤリハットに関係なく病棟に行って、気になるところは無いかというのは見ています。

医療安全委員会は、各部署から管理者クラスが1人ずつ所属し、20名程度で、月1回の会議をしています。
推進委員というメンバーを別に任命していて、より現場に近い実働部隊として各部署1人ぐらいずつ20名で活動しています。

医療安全の取り組みとして、取り組んでいることを教えてください。

平成30年から、ヒヤリハット報告を行っています。
未然防止の観点で、インシデントレポートよりもっと簡単に入力できるメモのような様式で集めています。

ここ2か月は強化月間として、ヒヤリハット件数を増やす取り組みをしていました。
KYTの研修を行い、提出が無い部署をまわって「例えばこういうことが起きていませんか?」「〇〇が発生したら報告してくださいね」とラウンドしていました。
結果的に今までの約1.5倍、月300件程集まるようになりました。

あとは、やはり高齢者の入院が多いという病院の特徴に合わせて、分析や研修を組み立てています。

業務委員会委員長の田中師長(左)と医療安全管理者の春木師長(右)

集まったヒヤリハットはどのように活用していますか?

ヒヤリハットを紙で集めていた頃は、取り纏めて集計する部分まで追いついていませんでした。
とにかく「数を出してもらう」ということに集中していました。

システム導入をきっかけにして、ヒヤリハットの様式もe-Risknで入力できるようにしました。
報告をタイムリーに見られるようになり、未然防止につながっています。

ヒヤリハットの報告をながめると、病棟や職員・時間帯などで傾向が掴めます。
このままだとインシデントに繋がりそうだと思ったときに、その部署へラウンドし、「最近こういう傾向があるけど対策立ててる?」「今の対策がちょっと合ってないから、別のアプローチを一緒に考えよう」など声をかけられるようになりました。しかもそれが、報告をもらってすぐ・タイムリーに。

各部署の方は、ヒヤリハットの報告をどのように活用していますか。 

現場でも確認してくださいとお願いしているので、職員は見てくれています。

全体研修では、部署ごとに発生したヒヤリハットを使ってKYT分析をしてもらいます。
事象や分析結果・行っている対策を発表してもらい、動画撮影してeラーニングの教材にしました。

ヒヤリハットやインシデントの傾向を教えてください。

入院患者の大部分が高齢者のため、やはり転倒転落・スキンテアが多いです。

どうしても、高齢者は皮膚が乾燥しがちで弱くなっています。
体の向きを変える・移動をするときに、基本的なことなんですけど、手や脚の位置・姿勢には注意をしなければなりません。患者様も人間ですしスタッフも人間ですから、業務に追われて焦ったり、確認が抜けてしまったりすることは、どうしても発生してしまいます。思いがけず体が動いてしまうような、認知症の患者様もいらっしゃいます。

そういった患者様の特性をふまえ、スタッフ要因のスキンテアをなるだけ減らすために、「前年比〇%削減」という目標を立てて、今年度は取り組んでいます。

転倒・転落については、どういった取り組みをしていますか。

転倒・転落が発生しやすい場面でもある移乗動作は、福祉用具を使って行うというのが主流になってきています。
前年度は、リハビリスタッフにお願いして福祉用具の研修を行いました。
実際に、福祉用具を購入して使用もしています。
スタッフの腰痛が多いので、腰痛防止にもつながると良いです。

ヒヤリハットやインシデントの傾向は、どのように各部署と共有していますか。

例えば、今年上半期で各病棟ごとに「療養上の世話に関する項目」をピックアップして、患者要因なのかスタッフ要因なのかを洗い出しグラフで渡しました。
各病棟には、そのグラフを元に弱みを強み、出来ていること・出来ていないことを振り返ってくださいとお願いしています。

今後はどのような分析を行いたいですか。

上の分析に加えて、もう少し細かく発生場所や時間帯、患者さんの自立度のレベルなども分析したいです。その時のスタッフの動きがつかめてくるのでは?と思っています。

春木様、今日はありがとうございました!

編集後記

金隈病院様の医療安全の取り組みを、取材しました。
高齢者の方をケアする際に、「ぱっと手を掴んだだけ」で皮膚剥離を引き起こすかもしれないという点は、純粋に大変驚きました。また、転倒リスクの軽減とスタッフの腰痛防止に福祉用具を活用しているというお話を聞いて、どんどん新しい対策・手段が生み出されるのだなと勉強なりました。

改めて、一口に医療安全の取り組みと言っても病院様のカラーや特性が出ると思った取材でした。