厚労省から「病院等において把握すべき重大事象の類型化について(医政地発0213第3号 令和8年2月13日)」が通知されました。

医療安全管理者様に、ぜひ確認していただきたい内容です。

本記事では、「通知をふまえて具体的にどのような検討が必要か」「通知を普段の活動にどう活かせるのか」までご紹介します。

なぜ、今このような通知が出るのかは、別途診療報酬改定に関する記事の中でまとめております。
よろしければ、ご活用ください。

※ここで紹介する内容は2026年2月18日(水)現在の情報に基づいています。

病院等において把握すべき重大事象の類型化とはなにか

病院等において把握すべき重大事象の類型化について(医政地発0213第3号 令和8年2月13日)

通知の詳細については、こちらからご確認ください。

病院等において把握すべき重大事象の類型化について(医政地発0213第3号 令和8年2月13日)

病院等において把握すべき重大事象の類型化とはなにか

医療安全管理部門等が把握すべき重大事象を、具体的に類型化(リスト化)したものです。
リストの内容は、一度ご確認ください。

リストの内容は以前、こちらの記事でご紹介したものがベースになっています。

a)患者への影響度が大きく、確実に回避する手段が普及している事象

  1. 手術等の侵襲的手技における患者、部位、手技又は人工物の取り違え
  2. 手術等の侵襲的手技における意図しない異物の体内遺残
  3. 薬剤又は栄養剤等の投与経路間違い(経消化管/非経消化管投与の取り違え又は経静脈/髄腔内投与の取り違え)
  4. ハイアラート薬の過剰投与(インスリンの予定量の 10 倍以上の投与、高濃度カリウム液の急速投与又は抗がん剤の過量投与)
  5. 既知のアレルギー又は禁忌薬剤等の投与による死亡又は後遺障害
  6. 意図しない不適合な血液又は血液製剤/成分の輸血又は臓器の移植
  7. 放射線治療における照射線量の設定間違い、照射部位の間違い又は累積線量の誤認
  8. 栄養剤等の注入前に検出されなかった消化管チューブの気道への留置
  9. 気管切開チューブの迷入による死亡又は後遺障害
  10. 医療用ガスの取り違え、酸素投与が指示されている患者への無投与による死亡又は後遺障害
  11. 医療機器の誤使用又は故障による死亡又は後遺障害
  12. 重大な検査結果の確認、伝達又はフォローアップの失敗による死亡又は後遺障害

b)患者への影響度が大きく、回避可能性は必ずしも高くない事象

  1. 手術等の侵襲的手技における以下の事象:術中心停止、大量出血、周辺臓器損傷又は予定外の再手術
  2. 硬膜外麻酔又は脊髄くも膜下麻酔に関連する血腫による死亡又は後遺障害
  3. 気道確保困難又は食道挿管による死亡又は後遺障害
  4. 鎮静による死亡又は後遺障害
  5. カテーテルによる検査又は治療における高線量被曝
  6. 生体情報モニターのアラームへの対応に関連する死亡又は後遺障害
  7. 肺血栓塞栓症による死亡又は後遺障害
  8. 脳空気塞栓症
  9. 分娩に関連する母体の死亡又は後遺障害
  10. 入院中の患者の自殺又は自殺未遂
  11. 転倒・転落による死亡又は後遺障害
  12. ベッド柵による挟まりまたは拘束具の使用による死亡又は後遺障害

通知の後半には、類型化の元となった「医療機関の特性に応じて求められる医療安全活動及び必要な組織体制等に関する研究」も紹介されています。

A類型・B類型がどのように導き出されたのか?という経過が追えますので、ご興味ある方はご覧ください。

通知をふまえて具体的にどのような検討が必要か

この通知をふまえて、普段の活動に使える5個の具体策を紹介します。

A類型・B類型に該当する事象が報告されているか・報告される体制なっているか確認する

A類型・B類型に該当する事業はかなり重大な事象のため、ほとんどの病院様では把握がされている(または発生していない)ものだとは思います。

とはいえ、下記を見直す良い機会としてご確認ください。

  • 過去に該当する事象が発生した場合、医療安全管理部門が把握していたか・報告があったか
  • いわゆるアクシデントレポート(レベル3b・4・5)が発生した場合の報告体制はどうなっているか

類型化されたリストを解説し、全職員に共有する(特に医師)

厚労省から出ている通知ということをふまえ、A類型・B類型のリストを職員様に共有をします。
その際に、具体的な事例や医療安全管理者様の解釈・コメントを添えるのもよいでしょう。

特に、病院の経営層の方・医師の先生方へはぜひ共有ください。

今回の通知を経営層・医師とのコミュニケーションのきっかけにしてください。

死亡・死産報告を活用する

院内での死亡事例を、死亡・死産報告書をつかって報告します。

医師は死亡診断書を作成しますが、その際に死亡・死産の報告書もあわせて作成します。
それをもとに、死亡症例の振り返りを行います。

死亡死産報告の運用を行っている病院様の事例は、こちらをご覧ください。
療養病棟をお持ちの病院様ならではの視点を、答えてくださっています。

オカレンス報告を活用する

オカレンス報告とは、医療行為に関連した合併症や有害事象が発生した場合に報告するものです。

今回リスト化されたA類型・B類型は、医師の関わりが深い事象がほとんどです。
医師の協力は不可欠でありながらも、なかなかインシデントレポートを記入する医師は少ないのが現実です。

例えば、「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」にて紹介されている横浜市立大病院の事例が参考になります。
オカレンス報告を求める合併症をあらかじめ定めて運用することで、インシデントレポートにくらべて医師からの報告割合が高いという結果も示されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001510540.pdf

医師への報告の促し方・工夫については、ぜひこちらの事例をご覧ください。

インシデント報告と一体的に運用されている事例については、こちらをご覧ください。

報告が無くともモニタリングする仕組みを作る

死亡・死産報告・オカレンス報告は、新たな業務となるため現場の理解がなかなか進まず、導入が難しい病院も多いです。

そういった場合は、医療安全管理者様の業務負荷がかかってしまいますが、特定の診療項目の事例・データをもとに、モニタリング・レビューをするのはいかがでしょうか。

・入院死亡事例
・緊急手術例
・手術の予定時間超過例 …など

上記は、電子カルテが導入されていればある程度データとして入手できるものです。

どういった項目をモニタリングすべきか?というのは、病院様の規模・性質にかなり左右されるかと思います。自院にとって意味のあるモニタリング項目はなんなのか、というところから検討すべきです。

もちろん現場からの報告は大切ですが、「報告に頼らず事象を把握する仕組みづくり」や、「状況の把握をしたうえで、報告してほしい事象があった場合は具体的に依頼する・促す」という動きも、医療安全文化の醸成のためには必要となりそうです。

まとめ

本記事では、「病院等において把握すべき重大事象の類型化について(医政地発0213第3号 令和8年2月13日)」をもとに、
通知をふまえて具体的にどのような検討が必要かをご紹介しました。

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