第4回目は、医療法人社団淳英会 おゆみの中央病院 請川(うけがわ)様、礒野(いその)様を取材しました。
請川様は、専任の医療安全管理者として活動されていらっしゃいます。
転倒転落防止のために、病院独自に取り組んでいる医療安全の活動について伺いました。

病院様の医療安全体制について教えてください。

専任で、医療安全管理者を担当しています。
各部署にセーフティマネージャーがいて、定期的に委員会を開いています。

レポートは平均で、約110件/月です。
1番多いインシデントは安静度逸脱で、その次に多いのは服薬関係ですね。

年に2回、全体研修をしています。虐待対応や患者誤認防止などの、医療安全に関係する研修を過去に行いました。インシデントの傾向に基づいて、なるべく全職員に関わりのある内容にしています。

医療安全の取り組みとして、取り組んでいることを教えてください。

病院独自の様式で、「転倒転落防止シート」を作成しています。
2018年ごろから転倒転落が増加していて、2020年10月に医療安全管理委員会にて病院長から転倒転落の防止対策を強化するよう指示がありました。

それまでは転倒転落が発生しても、いち早く対策を行いたいという思いから分析をあまり重要視しておらず、すぐに取れる対策から実施するという風潮がありました。
病院長からの指示を受けて検討していく中で、「なぜ患者様が転んだのかを分析しないと根本的な対策にならないのではないか」と気づいたんです。
そこで、転倒転落防止シートを使って、患者さんの背景から詳細に分析しました。発生した全件をシートに基づいてきっちり分析するのは、現場も相当大変だったと思います。

転倒転落防止シートについて教えてください。

リハビリ担当のスタッフと一緒に、1から作成しました。当院はリハビリが強みで、職員も患者様の生活・日常動作などをよく見ています。転倒転落分析シートは、リハビリの専門職の強みも活かして作成したシートです。項目を上から順番に埋めていくだけで、なぜ転倒転落が発生したのかという分析ができます。

転倒転落が起きた際、インシデントレポートとは別に入力しています。
再評価の欄もあるので、見返して事例検討や転倒転落の傾向を分析する際にも活用できます。

転倒転落防止シートの運用を始めた翌年には、発生件数が約半分になりました。再発も少なくなりました。
分析した結果が出たんだと思っています。
対策に使う製品も、何が患者様に1番合っているかを分析して決めています。

転倒転落件数が半減したというのはすごいですね!

転倒転落防止シートの情報を色々活用している点も、良かったのではないかと思います。

例えば、患者様のベッドネームを強化して「安全ボード」を作っています。枕元のベッドボードに貼っています。
ベッドボード本来の患者確認のための情報以外に、トイレ介助方法やリハビリに入る際の注意事項が一目でわかるようにしています。

具体的には、禁忌事項や、排泄・移動などの情報が分かります。
安全ボードを見ることで誰でも患者様に同じ対応ができ、転倒転落の防止にもなります。

例:安全ボード

2024年4月に機能評価を受審されたとお聞きしました。ご準備が大変だったのではないですか。

機能評価担当事務局のメイン担当として、1年半ほどかけて準備をしました。かなり大変でしたね。機能評価を乗り越えることができて、本当によかったです。

機能評価を受審したことで、臨床倫理で悩んだこと(看取り・家族の問題など)をe-Risknで報告するようになりました。患者相談の様式の中に、「倫理」というタグを追加して把握するようにしています。

医療安全と臨床倫理は近い領域なので、倫理委員会の際に活用しています。

これから取り組む予定の活動を教えてください。

現在は、全職員を対象にBLS研修を行っています。
今後は急変対応のスキル向上を目指して、ACLS研修や招集訓練を企画しています。