医療安全管理者の皆様、「院内でインシデントレポートを作成する習慣がなかなか根付かない」というお悩みはありませんか。
e-RisknCSチームが、インシデントレポート作成を習慣化するために、お勧めしているのが「ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告」の取り組みです。
この記事では、20年近く全国の病院様へインシデントレポートシステムを導入してきた中で、導入中に相談されて工夫した取り組みや、実際に病院様で行われている取り組みをご紹介します。
「どうしたら病院内にインシデントレポート作成の習慣が根付くだろうか」という悩みのお役に立てば幸いです。
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告とは?
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告とは、「インシデントまでは言えないが、業務上でヒヤリハットした事例の報告」です。もう少し具体的に言い換えると、「インシデントとなるような行為が患者に実施されなかった・未然に防げた事例の報告」です。
医療安全の世界でよく耳にする「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリハットが存在すると言います。
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告には、ヒヤリハット・ゼロレベル事例の先に生まれていたかもしれないインシデント・アクシデントを、未然に防ごうという意図があります。
ゼロレベル報告の運用事例に関してはこちら
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告を、集めるメリットとは?
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告を集めるメリットは、4個あります。
- インシデントレポートを書くきっかけ・習慣化につながります。
- インシデントレポートの作成よりも、職員の心理的な負担が軽いです。
- よくある事例を共有・分析し、対策が立てれます。
- 対策の標準化が出来ます。
特に、既に患者へ実施してしまった事象について、比較的多くの入力項目を埋めなければならないインシデントレポートよりも、ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告は、職員の心理的なハードルが低いように感じます。
「院内で呼びかけているのに、インシデント・アクシデントレポートの件数が、思ったように集まらない」というお悩みに関してはこちら
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告を、集めるデメリットは?
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告を集めるデメリットは、3個あります。
- 通常業務の合間に、作成が面倒。
- 実施していない事象につき報告するため、報告を忘れる。
- インシデント/アクシデントを発生させたわけでもないのに、書く意味を感じられない。
「作成が面倒」「報告を忘れる」については、報告しやすい環境を整えることが大切です。
また、「書く意味を感じられない」については、集計・分析の結果を院内で共有し、ヒヤリハット報告が医療安全を高める財産となることを、繰り返し発信する必要があります。
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告を集める方法は?
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告は、「とにかく書いてもらう」ことが大切です。
報告件数の多さが、分析や対応検討の第一歩となるからです。
「とにかく書いてもらう」ためには、集める際に気を付けるポイントがあります。
- 入力項目は、なるだけ簡単に。
分析のために、あれもこれも聞きたくなるのはわかりますが、報告件数を集めるために入力項目を減らしましょう。選択式で入力できるようにし、様式をシンプルに書きやすくします。 - すぐ書けるようにする
職員が書きたいときに、書ける環境を整える必要があります。
ポイントをふまえて、報告を集める方法は3パターンあります。
紙
院内でパソコンに不慣れな人・抵抗がある人が多い場合は、紙での運用をお勧めしています。
また、職員が使えるパソコンに制限がある場合も、紙での運用をお勧めしています。
ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告は、報告件数・報告までにかかるスピードを重視して、「職員に、とにかく早く書いてもらう」ことが大切だからです。
医療安全管理者様には、その後の分析・対応策の協議を行う際に、エクセルに入力したり集計したりという負担がかかってしまうという側面もあります。
エクセル
院内ですぐできる取り組みとして、エクセルで決まった報告様式を用意し、入力してもらう運用もあります。報告様式を共有フォルダに置いて、運用します。
全員で同じエクセルファイルを更新する場合と、報告ごとにエクセルファイルをコピーして作成する場合があります。
いずれの場合でも、医療安全管理者様はエクセルからの集計・エクセルの破損等、対応が必要なケースが見受けられます。
システム
すでにインシデントレポートシステムを導入している場合や、導入を検討している場合は、システムでの運用をお勧めしています。
システムでの運用は、2パターン考えられます。
- インシデント様式を利用し、事故レベルに「レベル0」を追加する。
- ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告の様式を利用する。
どちらの場合も、インシデントレポートシステムが対応可能か確認する必要があります。
- 事故レベルに、任意の項目を追加できるか。
- ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告様式が、機能としてあるか。
- ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告様式の追加が可能か。
- ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告の報告項目は、変更可能か。
集めた報告の活用方法は?
報告の傾向を分析し、院内で共有します。
報告件数が多い類似の事例は、委員会やカンファレンスにて対策を検討します。
対策を検討する際には、「医療事故情報収集等事業」のサイトより類似例の事例を検索し、参考にするのも有効です。
まとめ
この記事でご紹介した、ヒヤリハット報告/ゼロレベル報告は、実際に病院様で行われている取り組みや、導入中に相談されて工夫した取り組みです。
インシデントレポート作成の習慣化にお悩みの医療安全管理者様は、ぜひ試してみてください。